大学時代、少しだけギターを弾いていました。モントローズというバンドのコピーバンドのようなものを少しやっていました。社会人になって音楽からは離れた生活をするようになりました。大学時代購入したギターはギブソン・レスポール・カスタムという当時26万円もした非常に高価なギターなのでずっと家に大切に保管していました。ほこりをかぶったままだったのであまりにも可哀想に感じたのでメンテナンスをすることにしました。近くの楽器屋に電話で問い合わせると2万5千円ぐらいでリペアできるという話でした。ずっとほったらかしたしていたギターが2万5千円で綺麗になるなら安いものだと思いました(女の人もエステにこれぐらいかけると思います)。何度かそのお店のリペア担当者さんとメール交換をしました。結局、ギター自体を見てみないとなんとも言えないようなので、本日、土曜日にギターを持っていきました。
リペアの店の担当者さんは、僕と同時代の音楽を聞いていたようで、マイケル・シェンカー、リッチー・ブラックモア、ニール・ショーン(ジャーニー)、ランディー・ローズ、ナイトレンジャーなんかの話題で30分ほど盛り上がりました。そのリペア担当の方は、昔、スタジオ・ミュージシャンをやっていたそうです。音楽で食べていくのは本当に大変で、音楽を辞めて別の仕事をしていたこともありましが、縁があって今、楽器屋さんのリペア担当者としてお仕事をなさっているとおっしゃっていました。
「音楽で食べていくことは大変」であることは皆さんもご存知でしょう。ギターがうまい人はゴマンといるでしょうし、うまいだけではデビューできません。ルックスも大切です。スタイルも重要でしょう。
ふと考えてみましたが、「翻訳で食べていくことも」大変です。英語ができる人はごまんといます。英検1級とかTOEIC900点とかサラリーマンの中にも大勢いらっしゃいます。「翻訳だけで食べている人」は、日本中の労働者の中で極少数でしょう。それに英語ができても科学技術のことが分からなければ、特許翻訳は不可能でしょう。
実は、僕も一時期、翻訳から離れた時期があります。向いてないと思ったからです。翻訳以外の仕事をしていた時期があります。その仕事を止めた後、無職だった時期もあります。僕の事務所は、退職を引き止めない方針です。退職後どうするかも問いません。自分の人生ですから自分で決めれば良いと思います。何年かしてまた翻訳を始めても良いと思っています。翻訳以外にも仕事は色々ありますから自分でベストだと思う仕事を選べば良いと思います。日本に住んでいる限り、自分の人生は自分で決めることが比較的簡単でしょう。それにサラリーマンには、自由に退職する権利があります(経営者には自由に解雇する権利はありませんが)。
色々なことがありましたが、現在は、翻訳会社の経営者です。僕は、翻訳者ではなく経営者を選びました。翻訳が苦手だからです。翻訳者としては「食べていけない」だろうと思ったからです。昨年から仕事中心の生活を止めました。好きな音楽、体に良いフィットネスにも時間をかけるようになりました。仕事以外でお付き合いができる方々とも知り合えました。
なんども言いますが「翻訳だけで食べていく」ことはすごく大変です。
しかし「翻訳だけで食べていく」ことを望むなら、上の元スタジオ・ミュージシャンの方のように、現場(スタジオ、ステージ)以外のお仕事(リペア)も検討してみるべきです。僕は、「翻訳だけで食べていく」ことを望んだので、不得意な翻訳(現場の仕事)を諦めて、得意な会社経営を選びました。その結果、今でも翻訳業界にいます。翻訳以外の仕事はしていません。翻訳だけで食べています。
幸いにも翻訳業界には、ポストエディットという新しい仕事が生まれました。将来、「翻訳だけで食べていく」人に加えて、「ポストエディットだけで食べていく」人が誕生すると思います。
「昔、スタジオ・ミュージシャンをやっていました。ふとしたきっかけで今はポストエディットをやって生活しています」という人と出会っても不思議はないと思います。そのときは「やっぱりマイケル・シェンカーは、神だよね」みたいな話をしてみたいです。
- Blogged by Masa Kajiki, Founder CEO
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